「従業員の退職金、何か用意してあげたいんだけど、中退共でいいのかな?」——採用力を上げたい中小企業の経営者から、よくいただく質問です。

中退共は手軽で国の助成もある定番制度です。ただ、正直に言うとデメリットも大きい。この記事では中退共の弱点を包み隠さず整理した上で、「法人の証券口座で退職金原資を作る」という、もう一つの選択肢を紹介します。

中退共の仕組みとメリット

中退共(中小企業退職金共済)は、会社が従業員ごとに掛金(月5,000円〜3万円)を納め、退職時に共済から従業員へ直接退職金が支払われる制度です。

  • 掛金は全額損金
  • 新規加入時は国の助成あり
  • 管理の手間がほぼゼロ

「制度として退職金がある」と言える手軽さは確かに魅力です。

中退共の3つのデメリット

① ほぼ増えない。 予定運用利回りは年1%程度で、長期で積んでも掛金総額から大きくは増えません。インフレが続けば実質価値はむしろ目減りします。

② 原則やめられない・減らしにくい。 一度加入すると任意の脱退は制約が多く、業績が苦しい時期も掛金は続きます。資金の柔軟性は基本的にありません。

③ 会社がコントロールできない。 退職金は共済から従業員へ直接支払われます。会社への貢献度で上乗せしたい、あるいは问题のある辞め方をした従業員には規程どおり減額したい——そういった会社側の裁量は、掛金を納めた時点でほぼ失われます。

代替案:法人の証券口座で退職金原資を運用する

発想を変えて、会社の資産として法人口座で長期運用し、退職金は会社の退職金規程に基づいて会社から支払うという方法があります。

実際の運用イメージ:従業員1人あたり月1万円を世界株式の投資信託で積み立てた場合、過去の実績ベースでは26年で元本約300万円が約3,000万円に育った計算になる期間もありました(あくまで過去実績であり将来の保証ではありません。それでも年1%の中退共との複利の差は歴然です)。

この方式の利点は4つ。

  1. 制度の導入コスト・ランニングコストが不要——退職金規程と法人口座だけで始められます
  2. 資金が縛られない——業績が厳しい年は積立を止められ、緊急時は売却して運転資金にもできます(その場合は退職金原資が減る、という当然のトレードオフはあります)
  3. 支払いに会社の裁量が残る——貢献度に応じた上乗せも、規程に基づく減額も、会社の判断で設計できます
  4. 採用力への効果——「退職金制度あり(会社運用型)」は求人票で確かに効きます

注意点と、中退共との併用という考え方

法人口座方式は「会社の資産」なので、掛金の損金算入という中退共の税務メリットはありません(支払時に退職金として損金になります)。また運用リスクは会社が負い、資産の管理責任も会社にあります。

なので実務では、ベース部分を中退共(または確定拠出年金)、上乗せ部分を法人運用という併用設計もよく使います。役員の退職金準備(変額保険を使った方法)と同じ口座・同じ運用方針で一体管理できるのも、法人運用の実務上の利点です。

よくある質問

Q. 従業員に「退職金の原資を運用している」と伝えるべきですか?
A. 退職金規程(いつ・いくら払うか)を明確にしておけば、原資の運用方法まで開示する義務はありません。ただ「会社として退職金を準備している」ことは採用・定着の武器なので、制度の存在自体は積極的に伝えるべきです。

Q. 運用が失敗したら退職金が払えなくなりませんか?
A. だからこそ、短期売買ではなく10年単位の分散投資に限ること、退職金規程の支払水準を運用成績前提にしすぎないことが設計の肝です。このバランス設計こそ専門家と組む価値がある部分です。

まとめ

退職金制度は「あるか・ないか」で語られがちですが、本当の差は「どう作るか」に出ます。御社の従業員数・年齢構成・資金余力に合わせた退職金プランを、無料セミナーと個別相談で設計します。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。中退共の制度内容は執筆時点の情報です。運用実績の例は過去のものであり将来の成果を保証しません。退職金規程の設計・税務は社労士・税理士にご確認ください。