「子どもに200万円ほど渡してあげたい。運用している投信を売って現金で渡せばいい?」——面談でいただいた、とても良い質問です。

答えは「売らずに渡す方法がありますよ」。投資信託は名義ごと移す「移管(贈与)」ができ、税制の使い方次第で、現金化して渡すより大きく有利になることがあります。

売って渡すと「含み益への課税」で目減りする

運用中の投信を売却すると、含み益に約20%の税金がかかります(NISA口座を除く)。たとえば取得100万円→時価200万円の投信なら、売却時に利益100万円×約20%=約20万円が引かれ、渡せるのは約180万円。

一方、投信のまま移管(贈与)すれば、この時点で譲渡益課税は発生しません。取得価額は子に引き継がれ、課税は子が将来売却するときまで繰り延べられます。運用を続けたまま、器ごと渡せるわけです。

相続時精算課税——「渡した時の時価」で固定される

まとまった金額を渡すときの税制の選択肢が相続時精算課税です。累計2,500万円までの贈与が贈与税なしででき、その代わり相続時に「贈与した財産」を相続財産に足し戻して精算する、という制度。

ここでの最大のポイントは、足し戻される評価額が「贈与した時点の時価」で固定されることです。

  • 200万円分の投信を贈与 → 将来、相続時に1,000万円に育っていても、相続財産への加算は200万円のまま
  • つまり値上がり分はまるごと非課税で子のものに

「これから長期で育つ資産ほど、早く渡すと得」——この制度の本質はここにあります。

2024年の改正で使いやすくなった

以前の相続時精算課税は「一度選ぶと暦年贈与(年110万円非課税)が使えなくなる」のが大きな欠点でした。しかし2024年の改正で、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設されました。

  • 年110万円までの贈与なら、申告不要・相続時の足し戻しも不要
  • それを超えるまとまった贈与は2,500万円枠+贈与時価で固定

小さく渡すのも大きく渡すのも一つの制度内で完結できるようになり、実務での使い勝手が大きく上がっています。

注意点——向いているケース・いないケース

  1. 値下がりすると逆効果——贈与時の時価で固定されるということは、その後値下がりしても高い評価のまま足し戻されるということ。分散された長期成長型の資産に向いた手法で、個別株の一点賭けには不向きです
  2. 一度選択すると暦年課税には戻れない——その親からの贈与は以後ずっと精算課税です。他の相続対策(生命保険の非課税枠など)との全体設計の中で決めるべきです
  3. 少額なら暦年贈与で十分——年110万円以内の援助だけなら、あえて選択する必要はありません
  4. 移管の実務——証券会社間の贈与移管には手続きと日数がかかり、移管先で取り扱いのある商品かの確認も必要です。広く流通している商品ほどスムーズです

なお、夫婦間・家族間のお金の名義の基本は夫婦のNISAと名義の記事で解説しています。

よくある質問

Q. 贈与した投信をすぐ子のNISAに入れられますか?
A. 移管先は課税口座になります(NISA口座への直接移管はできません)。子のNISA枠を使うなら、いったん売却して買い直す形になり、そのときの含み益には課税されます。どちらが有利かは金額と期間次第なので試算を。

Q. 200万円くらいなら、どう渡すのがおすすめですか?
A. 急がないなら暦年110万円×2年で移管する方法もあります。教育や住宅など目的が決まっているなら別の非課税制度も候補になるので、目的を先に固めるのが正解です。

まとめ

贈与は「いくら渡すか」より「何を・いつ・どの制度で渡すか」で結果が変わります。お子さんへの資金援助の最適ルートを、資産の中身から一緒に設計します。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。贈与税・相続税の取り扱いは個別の事情により異なります。相続時精算課税の選択は取り消せないため、実行前に必ず税理士にご相談ください。