「退職金をもらって社長を退いた後、会社との関係はどうすればいい?」——事業承継の面談で必ず出てくるテーマです。
選択肢は「廃業」「完全に引き継いで引退」だけではありません。会社を小さくして残し、自分は最小限の役員報酬で関わり続けるという第3の道があります。この記事では、その具体的な数字と、越えてはいけない税務上の一線を解説します。
「小さく残す」の実額——月3万円弱で維持できる
会社を残す場合のランニングコストは、思っているより小さくできます。実例ベースの目安です。
- 役員報酬を月10万円に設定 → 社会保険料は個人負担+法人負担を合わせて月3万円弱。厚生年金に入り続けられるので、国民年金より将来の年金額も積み上がります
- 法人住民税の均等割——赤字でもかかる固定費で、最小規模なら年7万円
- 税理士の顧問料——決算だけなら年10〜20万円程度から
合計しても年60〜80万円程度。この負担で「法人」という器を持ち続けられます。
残すメリット——器があるとできること
- 社会保険の続き——厚生年金・健康保険に低い等級で加入し続けられる(国民健康保険より有利になるケースがあります)
- 小さな事業の受け皿——顧問業や不動産賃貸、趣味に近い事業など、退職後の収入を法人で受けられる
- 法人の資産運用を続けられる——法人口座で育ててきた運用資産(従業員退職金の原資など)をそのまま持ち続け、必要に応じて取り崩せます
- 保険の出口の柔軟性——法人契約の保険を維持したまま、個人への契約者変更のタイミングを選べます
ただし「退職金を出した後」には一線がある
ここが最重要です。役員退職金を損金として支給するには、税務上「実質的に退職したのと同様の事情」が必要とされます。代表を退いても実権を握り続けていると見なされると、退職金の損金算入が否認されるリスクがあります。実務上の目安として——
- 役員報酬を退職前の50%以上減額する(月100万円→10万円なら文句なしにクリア)
- 代表権を持たない(非常勤役員・監査役等へ)
- 経営の主要な意思決定に関与し続けない——後継者の相談に乗るのはよくても、決裁者であり続けてはいけない、というイメージです
面談でお客様にお伝えした言葉を借りれば、「退職金をもらった後は、働きすぎないでください」。これがこのスキームの合言葉です。
後継者側の設計もセットで
会社を残す設計は、後継者の代表就任・役員報酬の再設計・自社株の集約とワンセットです。特に退職金の額は「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」で枠が決まるため、報酬を下げる前に退職金を確定させる順番を間違えないこと。このあたりの段取りは、税理士と運用側(退職金原資の現金化タイミング)の両方を見ながら進める必要があります。
よくある質問
Q. 会社を残すのと廃業、どちらが得ですか?
A. 廃業には設備処分・登記などのコストがかかり、一度たたむと器は戻りません。「数年は小さく残して様子を見る→不要なら解散」という順番は取れるので、迷うなら残す方が可逆的です。
Q. 退職金をもらってすぐ、また常勤に戻れますか?
A. それは最も危険なパターンです。退職の実態がなかったと判断されれば、退職金の損金否認+役員賞与扱い(法人・個人ダブル課税)になり得ます。復帰が見えているなら、支給の時期・形を最初から設計し直すべきです。
まとめ
退職は「終わり」ではなく、報酬・退職金・年金・法人の器をどう配置し直すかという設計の問題です。あなたの会社の数字で「小さく残す」場合のコストと退職金の最適額を無料でシミュレーションします。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。退職金の損金算入の可否は個別の事実認定によります。分掌変更による退職金の支給は特に税務リスクの高い領域のため、実行前に必ず顧問税理士にご確認ください。社会保険料・均等割の金額は目安であり、地域・条件により異なります。
