法人契約の医療保険に入っている経営者の方が入院すると、保険金は個人ではなく法人の口座に振り込まれます。このとき、経理上そのまま「雑収入」として計上して終わり——にしてしまっているケースが非常に多いのですが、実はもったいない処理です。

先日も、あるお客様(経営者の方)から「入院して保険金が数十万円入ったが、そのまま会社の収入で計上した」というお話を伺いました。この記事では、法人が受け取った保険金の正しい経理処理と、役員個人に「見舞金」として渡す方法を解説します。

法人契約の保険金は、まず法人の益金になる

契約者・受取人が法人の医療保険では、入院給付金や手術給付金は法人に支払われ、全額が益金(雑収入)として計上されます。保険料を損金で落としてきた以上、受け取る時は収入になる——ここまでは避けられません。

問題はその先です。実際に入院してつらい思いをしたのは経営者個人なのに、お金は会社に入ったまま。ここで使えるのが「見舞金」です。

役員への見舞金は、法人は損金・個人は非課税

法人から役員へ支払う見舞金は、社会通念上相当な金額の範囲内であれば、法人側は福利厚生費(損金)、受け取る個人側は非課税として扱われます。

実務上の目安は、入院1回あたり5万円〜10万円程度とされています。判例や国税不服審判所の裁決でも、この水準を大きく超える見舞金は「役員給与」と認定され、法人側は損金不算入・個人側は所得課税というダブルパンチになった例があります。金額設定は慎重に行いましょう。

ポイントは3つです。

  1. 慶弔見舞金規程を整備しておく——「入院見舞金:○万円」と社内規程で定めておくと、恣意的な支給でないことを説明しやすくなります
  2. 金額は社会通念の範囲内に——目安は5〜10万円。保険金として入った金額をそのまま横流しするのはNGです
  3. 顧問税理士に事前確認を——決算月をまたぐ場合は特に、計上のタイミングを含めて相談を

実例:保険金27万円が入ったケース

弊社のお客様の実例です(数字は一部丸めています)。経営者の方が1週間ほど入院され、法人契約の医療保険から27万円の保険金が支払われました。当初はそのまま雑収入として計上されていましたが、ちょうど決算月が近かったため、次の対応をご提案しました。

  • 保険金27万円:雑収入として計上(ここは変わらず)
  • うち5〜10万円:役員見舞金として支給(福利厚生費=損金)
  • 差引:益金の一部が圧縮され、個人は非課税で受け取り

保険金の請求からわずか1ヶ月で入金され、決算前に見舞金の処理まで間に合ったケースでした。「保険金が入ったら、見舞金を検討する」をセットで覚えておくだけで、税負担と手取りが変わります。

そもそも「給付漏れ」していませんか

見舞金の前に、そもそも保険金を請求し忘れているケースも実は多くあります。特に多いのが日帰り手術や内視鏡検査での切除で、「入院していないから対象外」と思い込んでいるパターンです。詳しくは日帰り手術でも給付金がもらえる話で解説しています。

また、法人保険は「入口(保険料の損金処理)」だけでなく「出口」の設計も重要です。65歳以降に契約者を個人へ変更して保障を一生涯残す方法など、出口戦略は役員退職金の記事とあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 見舞金はいくらまでなら大丈夫ですか?
A. 一律の法定基準はありませんが、実務上は1回の入院につき5〜10万円程度が目安です。役位や入院日数に応じた規程を作っておくのが安全です。

Q. 従業員が入院した場合も同じですか?
A. 従業員向けの見舞金も、規程に基づく相当額であれば福利厚生費として処理できます。役員だけを特別扱いする規程は否認リスクが上がるため、全社共通の規程が望ましいです。

まとめ

法人保険は「入る時」より「もらう時・やめる時」の設計で差がつきます。保険の出口も含めた退職金・自分年金の全体設計は、無料の個別セミナーで体系的にお話ししています。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。税務上の取り扱いは個別の事情により異なるため、実際の処理は必ず顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。